オンライン授業がもたらす大学教育のこれから

著者
大正大学地域構想研究所 専任講師
髙瀨顕功

オンライン授業のメリットとデメリット

前回はコロナ禍における大正大学の取り組みと、オンライン授業の形態についてご紹介しました(オンライン講義への切り替え)。今回は、実際にオンライン授業を通じた所感をご紹介したいと思います。前回同様、ここでの記述は私個人の見解であることをお断りしておきます。

オンライン授業という新たな学びのスタイルがもたらす学生への影響にはどのようなものがあるでしょうか。たとえ一過性のものだったとしても、今後の大学教育のあり方に影響を与える可能性もあるので、これまでオンライン授業をしてきた経験から、私が思うメリット、デメリットを紹介いたします。

一つは、遠方の学生が参加できるというメリットがあります。

オンライン授業をして、本学のある東京から何百キロも離れた実家から参加しているという学生がいました。聞けば、コロナ禍の影響で上京できず、実家に留まっているとのこと。対面授業ではありえないことですが、オンライン授業ならではの光景です。

自宅から通学できる範囲に大学がある学生は限られています。現在、全国に大学は786校ありますが、そのうち1都2府6県の三大都市圏(東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)に半数以上の401校(51%)が集中しています(文部科学省『令和元年度学校基本調査』から算出)。地方は大学が少なく、大学に進学しようという生徒の多くは地域移動(下宿)を余儀なくされるため、学費に加えて、家賃や生活費などのコストも計算しなければなりません。これが学びのハードルになる可能性もあります。

オンライン授業が一般的になれば、居住地に関わらず、望んだ大学の授業を受けることができます(もちろん入試という選抜はありますが)。地理的、経済的な制約が縮小することによって、より多くの人に学びの機会が提供されることになります。教育の地方格差の是正につながるのではないかと感じています。

一方、学びのコミュニティが形成されにくいというデメリットもあります。

学生は授業を受けるためだけに大学に来るわけではありません、サークルに参加したり、友達としゃべったりすることを目的に来る日もあるでしょう。このようなキャンパスでのコミュニティが形成されていれば、大学に行くことが習慣化され、結果として授業にも参加する機会が多くなります。

大学は単位制ですが、すべての授業が学生の興味関心に必ずしも合致しているとは限りません。必修科目であるがゆえに、好むと好まざるとにかかわらず履修しなければいけない科目もあります。そんな時、教室で顔を合わせる仲間がいたら、どんなに心強いでしょうか。友達に会いに行くために、そういった授業に顔を出す学生も少なからずいるのです。

また、授業の内容についての疑問や理解を、友達同士で共有することができるのも学修意欲を高めるポイントではないかと思います。このような学びのコミュニティの形成という点からすると、オンライン授業はやや分が悪いように思います。

一方で、SNSの活用により、学部、学科、あるいは履修している科目ごとで学生同士がコミュニティを作っている場合もあります。TwitterやFacebookなどで、ハッシュタグをつけてつぶやくことで、互いにつながることができるというわけです。これによって、まだ一度も顔を合わせたことがない新一年生でも、互いにつながり、交流が図られているケースがあることも仄聞しています。コロナ禍の混乱を共に乗り切るという目的が、連帯感を高めているのかもしれません。

アフターコロナからウィズコロナへ

本学ではオンライン授業はあくまでもコロナ禍における対応で、状況が落ち着けば対面授業に戻す方向でいます(予定では9月以降)。しかし、問題なのは、ワクチンのない中で、新型コロナウィルスの感染がいつまた拡大するか読めない状況であるということです。

したがって、新型コロナがある前提で、授業を組み立てていくことも必要になってくると思います。厚労省が勧める「新しい生活様式」に従うなら、大人数での講義やグループワークなどは今後難しくなるでしょう。場合によってはオンライン授業がさらに延びる可能性もあります。フィールドワークや実習などの科目も実施を含めて対応を検討しなければなりません。そう考えると、新型コロナ後の大学教育ではなく、新型コロナとともにある大学教育へと思考の枠組みを広げる必要があるように思います(これは大学に限らず、小学校、中学校、高等学校においても同様です)。

実は、大学教員間でもSNSを活用した、コミュニティづくりが進んでいます。3月末にFacebook上に「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」というグループができました(関西学院大学の岡本仁宏先生が作ってくださいました)。ここでは、各教員の取り組み、各大学の対応、愚痴、解決策、などさまざまな情報が共有されています。大変なのは自分だけでない、学生の利益になるよう知恵を出し合ってこの局面に対応しようという教員ならではの矜持が、大きな連帯を生み、今では2万人近い人が参加するバーチャル・コミュニティとなっています。きっと、このコミュニティは、ウィズコロナの時代にも継続し、よりよい教育のために様々な知恵が出されていくことでしょう。

2020.07.01