地方圏における技能実習生の活用の背景と今後の展望

著者
大正大学地域構想研究所 教授
塚崎裕子

外国人の受入れについては、昨年4月から人手不足に対応するための新しい制度が動き出し、新たな局面を迎えている。これからの外国人の受入れを考える一つの材料として、本稿では、前回に引き続き、地方という軸から日本に住む外国人の状況をみる。

技能実習生の活用の背景

地方圏(注1)における技能実習生の活用の背景を探るため、技能実習生が多い食料品製造業、機械金属製造業、建設業を対象として、地方圏の各道県における有業者に占める技能実習2号(注2)移行申請者の割合(注3)(以下では「技能実習移行申請者の割合」とする)と有効求人倍率(注4)の関係をみた(図1)。

対象とした産業全てについて、技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の間に正の相関が認められた。人手不足の状況が厳しい県ほど、技能実習生の活用が進んでいる傾向が明らかになった。
 

図1 各産業の有業者に占める技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の関係(地方圏)

(注)点線は近似曲線を表している。
(資料出所)各産業の有業者に占める技能実習2号移行申請者の割合は、国際研修協力機構「都道府県別・職種別技能実習2号移行申請者数」(2016年度)と総務省「就業構造基本調査」の産業別有業者数(2017年) から筆者が算出した。有効求人倍率は、厚生労働省「職業安定業務統計」の各県における月間有効求人倍率(パートを含む)から2016年度平均を筆者が算出したものを用いている。

 
次に、大都市圏と地方圏における技能実習生の活用の背景の相違点を探るため、地方圏と同じように大都市圏の各都道府県における対象産業の技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の関係をみた(図2)。大都市圏については、地方圏と異なり、対象とした産業全てにおいて技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の間にほとんど相関がなかった。技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の間に明確な正の相関がある地方圏の状況は大都市圏ではみられず、人手不足であるほど技能実習生の活用が進んでいる傾向は、地方圏のみ認められる傾向であることがわかった。地方圏における技能実習生の急増は、まさに人手不足の地域が強く牽引しているものであるといえる。
 

図2 各産業の有業者に占める技能実習移行申請者の割合と有効求人倍率の関係(大都市圏)

外国人の受け入れと地方創生

これまで5回にわたり地方という軸から日本に住む外国人をみてきた。これまで行った分析から、①地方圏での外国人の急増は、大都市圏と異なり、主に技能実習生の増加によるものであること、②これまで技能実習生が少なかった地域を含め、全国的に技能実習生の活用の度合いは高まっていること、③大都市圏と異なり、地方圏では人手不足であるほど技能実習生の活用が進んでいる傾向が認められること等が明らかになった。

日本に在留する外国人はここ数年急増しているが、今後見込まれる少子高齢化の一層の進展や人手不足対応のための新たな外国人受入れの枠組みの創設等を考え合わせると、在留外国人の増加の趨勢はこれから勢いを増すことが予測できる。特に地方圏においては、少子高齢化に加え、首都圏への一極集中により、生産年齢人口が減少し、人手不足がさらに厳しくなることが危惧されている。外国人労働者に対するニーズは大都市圏よりも地方圏で一層強くなり、地方圏に住む外国人の増加のペースも速まる可能性も高い。このような中、外国人の受入れと日本の抱える大きな課題である地方創生を併せて検討していく視点が欠かせないと考える。

翻って、日本に在留する大半の外国人の出身地であるアジア諸国をみると、今後急速に高齢化することが見込まれている国も多い。国際的な労働力の競合はますます厳しくなることが予想される。外国人に選ばれるような魅力的な生活環境や就労環境を整備するという観点も不可欠となろう。さらに、外国人一人ひとりが日本に住んだ後の各自の将来のライフキャリアや職業キャリアを具体的に描けるようにした上で受入れを行うということも肝要となってくるだろう。
 

(注1)地方圏は、大都市圏以外とし、大都市圏は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)とした。
(注2)技能実習2号は、入国後2・3年目の技能等に習熟するための活動。入国後1年目の技能等を修得する活動である技能実習1号から移行する。
(注3)各産業の有業者に占める技能実習2号移行申請者の割合は、国際研修協力機構「都道府県別・職種別技能実習2号移行申請者数」(2016年度)と総務省「就業構造基本調査」の産業別有業者数(2017年) から筆者が算出した。
(注4)有効求人倍率は、厚生労働省「職業安定業務統計」の各県における月間有効求人倍率(パートを含む)から2016年度平均を筆者が算出したものを用いている。

2020.03.17