6割の自治体が策定終了している

著者
大正大学 地域構想研究所 主任研究員
中島 ゆき

本来であれば新年度を迎え、新しいことの始まりで慌ただしくもワクワクした気持ちが膨らむ時期であったはずでしたが、新型コロナウィルス感染拡大によって本年度は未曽有のスタートとなってしまいました。

新型コロナウィルスに罹患された皆様と、感染拡大により生活に影響を受けられている地域の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。

さて、この4月から第2期「総合戦略」(以下、「2期戦略」という)がスタートしました。この第2期に向けて、昨年から多くの自治体が第1期の振返りや評価、「2期戦略」策定作業にお忙しかったかと思います。こうした「2期戦略」策定などに関する状況を把握し、どのような課題を自治体が抱えているのか、本研究所ではどのような支援ができるのかを考えるために、この3月に日本全国の自治体(1741自治体)を対象としたアンケートを実施いたしました。

おかげさまで710自治体からご回答をいただき(回収率40.8%)、大変貴重なご意見を伺うことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

現在、鋭意集計・分析中でございます。自治体の規模による違い、政策の取組み状況による違いなど、詳細の分析を行っておりますので、まとまりましたら改めてご報告いたしますが、まずは速報としまして、「2期戦略」策定の状況を先んじてお知らせいたします。

約6割が2期戦略の策定を「令和2年3月中に終える」と回答

まず、2期戦略の策定を終えているか否かに関して聞いたところ、59.3%の自治体が「既に策定を終えてHP上で公開している」、「令和2年3月までに終える予定」との回答でした。

(図1)第2期「地方版総合戦略」の策定状況

令和元年度中に策定しなかった自治体は、上位の「総合計画」に合わせるという回答が多数

28.3%の自治体が「令和2年度中に策定予定」、また、12.3%の自治体が「新たな策定をしない」との回答でした。その主な理由は、上位の「総合計画」の終年度が令和2年のためそこに合わせるというもの、あるいは、そもそも2期戦略を上位の「総合計画」に踏襲させて新たに策定しない、という回答でした。

政策立案の外部委託と人材育成について

第1期「地方版総合戦略」の策定の際には、「策定を民間コンサルティング会社等へ全面的に委託しているのではないか」(※1)といった外部委託の多さについて議論がなされた経緯がありました。自分たちの地域の未来のことだから内部で策定をするべきである、といった意見がある一方で、専門知識を有する人材が少ない上に職員の業務過多を課題視する声もきかれていました。
そこで、本アンケートでは2期戦略の策定の外部委託の状況と、それを担う職員の人材確保や人材育成の状況も調査しました。

(※1)「地方版総合戦略等の検証について」(平成31年3月/内閣官房まち・ひと・しごと創生本部)よりコメント一部抜粋

5割の自治体が「まったく外部委託せず」と回答

2期戦略の策定の外部委託に関して聞いたところ、50.1%の自治体が「まったく外部委託しなかった」との回答でした。また、第1期よりも委託量が増えた自治体は2.4%程度、対して第1期よりも「委託量が減った」は18.0%、「同程度委託」が19.0%との回答でした。

(図2)2期戦略策定の外部委託状況について

外部委託しなかった(または減った)理由

「まったく外部委託しなかった」および「委託量が減った」と回答した自治体の主な理由のトップは「経費の削減」で63.9%でした。次いで多かったのが「職員の仕事である」が47.8%と、半数近くの自治体で担当職員が策定の業務を遂行している状況でありました。

(図3)外部委託しなかった(あるいは委託量が減った)理由(複数回答)

こうした戦略系の立案を担う人材の確保や育成について、本研究所では5年前の地方創生がスタートするタイミングで一度アンケート調査を実施しています。今回の調査で5年間の推移を見ることができますが、一定の自治体規模では人材確保が進んでいる様子がみられています。

自治体の規模による違い、政策の取組み状況による違いなど、詳細の分析を行っておりますので、また報告したいと思います。

2020.04.15