地域おこしの新潮流

著者
大正大学地域構想研究所所長
清成忠男

地方の疲弊

いま、我が国においては、人口の大都市集中と周辺地方の疲弊が進んでいる。周辺地方においては若者の流出が続き、人口が減少傾向をたどっている。そして、人口構成を見ると高齢者の比率が一段と高まっている。地域は老化し、経済活力を失いつつある。

さて、地方の疲弊の現状は次のとおりである。何よりもまず、特徴は域際収支(※)の赤字である。移入が移出を上回っているのである。地域内の産業が弱体で雇用の場が少ない。したがって、若者は職を求めて地域外に流出せざるを得ない。こうして地域は人口数でも経済活動でも縮小の悪循環をたどることになる。

しかも、こうした現象は先進諸国に共通である。特にヨーロッパ大陸の諸国において、こうした現象が著しい。

※ 域際収支とは、国際収支の概念を地域経済に適用したもの。地域際収支とも。

疲弊からの脱却

域際収支赤字の是正は、新産業の創出を行うしかない。

それによって、地域経済の強化を実現するのである。問題は、実現の方法である。いま、欧米諸国で試みられているのはスタートアップの後押
しである。数多くの企業家が自らの事業を起こす。そうしたスタートアップが多ければ新しい産業が自ずと形成される。スタートアップの促進が地域の重要な振興課題になる。

つまり、スタートアップした新企業が、多かれ少なかれイノベーションを起こす。こうした企業の競争過程においてイノベーションの連鎖が生ずる。その際、まず企業者は新しい需要に注目する。そして、新しい手法でそうした需要を充足する。
したがって、既存企業もそうしたスタートアップの潮流に着目し、対応する。

いずれにしても、新産業の担い手は多くのスタートアップ企業である。スタートアップに際して、重要なことは産学連携である。新しいビジネスの手法は産学連携で開発する。

そして最近の産業動向は、専門技術の融合である。
すなわち、複数の大学や企業の連携によって異なった技術を新たに結合するのである。長期的な動向としては、第四次産業革命の展開に対応することが重要である。

疲弊脱却の仕組み

地域の疲弊からの脱却にあたっては、スタートアップの円滑化に留意しなければならない。

そのために、最近の欧米では、インキュベーター、アクセラレーター、ベンチャーキャピタル、企業家育成スクールなどを総合的に動員する体制が取られている。

官民連携で地域に強固な体制を構築し、強力なリーダーの存在が重要になる。
新産業ヴィジョンを策定し、独自な産業の形成を具体的な目標とする。
多くのスタートアップ企業を地域に集積させ、クラスター形成へと誘導する。地域内において、スタートアップ企業、経済団体、大学などのネットワーク化をはかる。地方自治体や国の政策との連携をも進める。それによって地域力の強化をはかり、新しい産業拠点の形成を実現する。

同時に、他の地域とのネットワーク化をはかる。

2018.12.25