新しい地域概念

著者
大正大学地域構想研究所所長
清成忠男

従来の地域概念

これまで長い間、地域というと「地理的に限定された、ある程度まとまった地域」と理解されてきた。ただ、こうした理解は必ずしも厳密ではない。

もともと地域の機能は多様である。したがって、地域の外延を一義的に考えることはできない。現実には、さまざまな外延がオーバーラップする。

また、交通手段の発達によって、人々の行動半径は拡大する。
活動によっても、圏域は異なる。生活圏、通勤圏、経済圏などオーバーラップしながら、距離的な大きさは異なる。

さらに、地域社会という視点から見ても、その構造的なあり方は多様である。歴史的、文化的視点から見ると、地域概念は単純ではない。

それでも、地域は行政区分によって、区画される。都道府県、市町村がその例である。統計調査も、こうした行政区分に対応している。いずれにしても、地域は地理的に限定された空間としてとらえられている。歴史的に変動しながらも、地理的に明白な境界によって、一つの空間として区分されている。

もちろん、行政区分は絶対的ではない。実際、行政単位の統合がしばしば行われている。この点は、市町村の合併を見れば、明らかである。

だが、最近では、こうした地域概念ではとらえられない動きが生じている。

つながる地域

これまで、個々の地域は、多かれ少なかれ独立した存在であった。経済的に自立しているかどうかは別にして、行政的にはこの地域は独立した存在である。まさに、個々の地域は「地方自治体」を形成している。
こうした地域が、現在つながりつつある。地域はIoTでつながりつつある。地域は、まさにネットワーク社会における地域と位置づけることができる。地域は、もはや孤立した存在ではない。

デジタル地域として数多くの地域がつながる。そして、拠点地域としてデジタル・ハブが形成される。しかも、デジタル・ハブには、特定の機能を強化することも可能になる。デジタル・ハブは周辺地域を交えることになる。デジタル地域の関係性を理解すると、今度は政策的にデジタル地域ネットワークを整備することになる。

ドイツのデジタル・ハブ政策

ドイツにおいては、連邦の経済技術省が2016年に「デジタル・ハブ・イニシアティブ」という政策を始めた。このハブというアイディアは企業や創業者を数多く特定地域に立地させ、集積効果の活用を期待するという考えである。いわばドイツ版のシリコン・バレーを形成しようというのである。

デジタル・ハブを数多く一挙に形成し、全体のネットワーク化をはかる。国全体のデジタル化を深く、かつ、加速化することが目的である。12の地域を指定し、それぞれ特定分野の開発拠点にする。(表1参照)

そのように、全国的に開発拠点を形成し、そのネットワーク化を進める。全国的に企業家風土を創出し、経済全体の活性化を実現することを期待している。
なお、デジタル地域は、地方の既存産業と深い関連を有している。

日本の遅れ

ドイツとは対照的に、わが国では地域のデジタル化に遅れが目立つ。

たしかに、わが国においても「スマートシティ」などのプロジェクトが試みられている。ただ、都市全体のスマート化というよりはエネルギー・マネジメントに限定しているという傾向が見られる。取り組んでいるのも、少数の民間企業である。省庁の政策的対応も不十分である。縦割りにも問題がある。政策の持続可能性も懸念される。

あらためて都市全体の活性化を目的とした政策のグランドデザインと実施主体の分業体制の構想・構築が望まれる。

2018.10.31