重老齢社会

著者
大正大学地域構想研究所所長
清成忠男

重老齢化元年

わが国の高齢化は、新しい段階に入りつつある。後期高齢者が増加し、前期高齢者の数を上回るようになっている。

後期高齢者が前期高齢者を上回る社会を、ここでは「重老齢社会」という。この概念は『日本経済新聞』の問題提起による。

わが国は世界で初めてこうした状況に移行するだけに、注目すべき概念である。

さて、人口推計によると、わが国は2018年3月に「重老齢社会」に移行している。2018年はまさに「重老齢社会元年」といえよう。

2015年の国勢調査では、前期高齢者の人口に占める比率は13.8%、後期高齢者は12.9%であったが、その後は後期高齢者が年々増加している。2020年には、前期高齢者12.0%、後期高齢者 14.9%となる見込みである。そして、2040年には、 15.1%の前期高齢者を、20.2%の後期高齢者が上回り、差は着実に開く傾向にある。

ところで、問題は、こうした「重老齢社会」への移行が、構 造的にどのような問題を発生させるかである。

社会保障費の拡大

わが国は、すでに人口減少社会に入っている。にもかかわらず、高齢者比率が上昇、とくに後期高齢者の比率が上昇する。健康な後期高齢者が多いにしても、やはり介護や認知症への対応が必要になる。

介護保険要介護認定者数の推計を見ると、2000年度には 256万2000人であったのが、2010年度には500万2000人とほぼ倍増し、2018年1月末には629万2000人に達している。この629万2000人のうち、前期高齢者は12 %程度である。後期高齢者が圧倒的に多い。

同様に、1人当たり医療費の推計値を見ると、年齢とともに 金額が多くなっている。それも、高齢者になると、加齢とともに急上昇している。したがって、後期高齢者が増加すると、全体としての医療費は急上昇する。

いずれにしても、「重老齢社会」においては、社会保障費の 急増は避けられない。他方、経済面では、高齢者は「稼ぐ力」として期待すること はできない。

問題は、それだけではない。地域格差にも注目しなければな らない。

あらためて 地方創生 を

「重老齢社会」への移行は地域によって異なる。高齢化と人口減少が進めば、「重老齢社会」が近づく。

そこで、2015年について見ると、全国はまだ「重老齢社 会」には至っていない。しかし、都道府県別にみると、 24 道県が「重老齢社会」に移行している。北海道・東北、甲信越、四国、九州などに分布している。他方、東京圏、名古屋圏、関西圏はその対極にある。過疎地域を多く含む人口減少県が「重老齢社会」に移行し、大都市圏がその対極にある。とりわけ秋田、島根、高知の3県において後期高齢者の比率が 17 %を超え、前期高齢者を大きく上回っている。逆に、東京は後期高齢者比率が 10.9%と低く、前期高齢者の11.8%を下回っている。しかも、今後とも前期高齢者の比率は高く、2045年になっても後期高齢者の比率を上回っている。東京は「重老齢社会」とは程遠い存在である。人口の一極集中が続くのみならず、地域格差が拡大するということになる。

全国レベルでは、すでに「重老齢社会」に移行しており、前 述したように社会保障費の拡大は避けられない。社会保障の効率化が不可欠である。当然、市町村の役割が重視される。市町村レベルでは、すでに「重老齢社会」に移行している地 域がかなり含まれている。こうした地域の自治体財政は弱体化しているから、地域包括システムだけをとって見ても、的確な運営は容易ではない。社会保障の効率化といっても、AIの活用にとどまらず、訪問看護ステーションのチェーン化など、新しい仕組みの開発が必要になろう。医療と看護・介護の統合、地域分散とネットワーク化、AIとIоTの活用、等々、本格的な検討を急がなければならない。

他方、重老齢化率の高い地域では、社会の維持コストを少し でも吸収するために、新産業創出の重要性が強まっている。経済社会のデジタル化が新しい事業機会を多様に生み出している。新産業の創出は、現実に可能である。

(地域構想研究所長 清成忠男)

2018.06.30