シルバー人材センター 活性化への課題~鹿児島市シルバー人材センターの事例から(上)~

著者
大正大学地域構想研究所教授
金子順一

地域で高齢者の就業を支えるシルバー人材センター。高齢層の拡大によりセンターの事業の活性化はどの地域でも重要テーマだ。多彩な事業と会員拡大で実績を上げる鹿児島市シルバー人材センターの事例から、今後取り組むべき課題を考える。

団塊世代が70歳に到達。改めて真価が問われるシルバー人材センター

地域に密着した仕事を高齢者に提供する、シルバー人材センター。センターは国、市区町村から補助金を受ける公益団体で、全国1300余りの地域に設置されている。会員資格は原則60歳以上、その平均年齢は約72歳である。全国の会員数は72万人(2016年)を数える。
会員が従事するのは、一般家庭、自治体などから受注した臨時的、短期的な仕事(*)である。退職後のセカンドライフでは、健康や社会参加のため、また追加的な収入を得るため短時間の就業を希望する高齢者が多い。地域でこうした就業ニーズに応えるのがセンターの役割である。
少子高齢化の進行で高齢層は年々拡大を続ける。それだけ対象にする年齢層も厚くなっているが、センターの会員数、事業規模は高齢化の趨勢に追いついていない。
会員数の長期的な推移(全国計)を見ると、法制化が行われた1986年以降の20年間は、会員は順調に増加、2005年には76万人となった。だが、それ以降は頭打ちの状態が続く。リーマン・ショック(2008年)の際、会員が一時的に増加するという特殊事情があったので、数字上は2009年の79万人をピークに減少が続き、ようやく2015年に歯止めがかかった形である(左頁上のグラフ参照)。
その背景には、定年延長で企業の雇用が65歳程度まで延びたことがある。事実、60代前半層のシルバー会員は大きく減少した。産業界で人手不足が顕著になっていることも指摘できる。60代後半以降も企業で働く人が増えているため、会員はこの年齢層でも伸びていない。一方70代以降の会員は増加基調にある。
団塊世代(1947〜49年生まれ)がいよいよ70歳に到達した。これからは70歳を過ぎても会社で働く人は増えるだろう。「生涯現役」が叫ばれる昨今、大変結構なことだ。しかし、健康、趣味、社会活動など生活時間と折り合いをつけながら地域で働きたい、こうしたニーズを持つ高齢者は確実に増える。この高齢層をどう取り込むか、シルバー人材センターの真価が問われる。
いま全国各地で、高齢者による見守り・介護、保育、教育、環境、防災など共通の地域問題が顕在化している。そして、若壮年層の減少で担い手確保が難しいことも多くの地域に共通する。それだけに、こうした地域サービスの担い手として元気な高齢者が活躍するのは、地域にとって何とも頼もしい限りだ。担い手となる高齢者自身の健康保持につながることも見逃せない。
高齢者の活躍は地域社会のあるべき姿と誰もが感じている。自治会や地域支え合い組織などとともに、特に担い手確保という点でシルバー人材センターが果たすべき役割は大きい。センター事業の活性化と会員拡大は、特にこれから急速に高齢化が進む大都市圏では、避けて通れない課題と言えるだろう。

会員増加、事業拡大で実績を上げる
鹿児島市シルバー人材センター

 全国的に会員減少が続くなか、ここ数年顕著な実績を上げているのが鹿児島市シルバー人材センター(藤山幸一理事長)である。つい最近まで2300〜2400人前後で推移してきた同センターの会員は、15年度末に2601人、16年度末には3050人へと飛躍的に増加した。この2年間で670人、実に28%も増加したのである。契約金額でも2年間で20%近く伸びている。これは、鹿児島市の人口規模を考えると全国的にも屈指の成果と言えるだろう。

 では、どのような取り組みが奏功したのであろうか。まず、人手不足分野への派遣就業拡大に取り組んだことが挙げられる。センターでの就業は、地域に密着した簡易な仕事を「雇用」ではなく「請負」という形で行うのが本来である。会社に雇われるのではなく、会員が請負仕事で行うのである。しかし「請負」では、会社の指揮を受け働くことができない。人手不足分野での就業は一般労働者と変わらないから、派遣形式をとらなければセンターで実施できないケースが多い。

 人手不足の深刻化が地域的に広がるなか、全国の多くのセンターが派遣事業に取り組む。人手不足が深刻な業種・職種の分野で派遣に力を入れる

のは国の方針でもある。現役世代でカバーしきれない就業機会を高齢世代がサポートする取り組みは、今日雇用政策の重点課題になっているのである。

 鹿児島市センターの事業実績をみると、契約金額の増加の多くは派遣事業の伸びによっていることがわかる(上の表参照)。「請負」がほぼ横ばいで推移する一方、「派遣」は過去2年間で6倍以上に急増。事業全体に占める割合も4%から23%へ跳ね上がった。

 派遣先は、スーパーの食品加工・レジ、飲食店や医療福祉施設での調理補助、車両の運転、幼児保育など多彩だ。就業先の開拓では、受け入れ企業の目線に立った丁寧な働きかけが特筆できる。どのような作業がどの程度の単価で利用可能かを具体的に示した資料を業界別に作成、センターの積極的利用を促している。

 民間企業では当たり前のことかもしれないが、「これだけ徹底した〝攻めのシルバー〞」(藤山理事長)を実践するセンターは全国的には少数派だろう。人手不足の下で、受け身で待つのではなく、企業目線に立った積極的な行動が就業先の開拓につながっているのである。

 派遣などシルバー事業の拡大は、センターの運営基盤を確かなものにするだけではない。現役世代をサポートし地域の産業、社会を下支えするものであり、地域経済にとって大変重要な意味を持つものなのである。

(以下次号へ続く)

 

* 仕事の内容は、施設管理、家事・育児サービス、庭木の剪定、清掃、調理、自動車の運転、一般事務、学習教室の講師など幅広い。

2018.04.27