地域創生への思いー地域構想研究所創立5周年記念シンポジウムより

地域研究のはじまり

高度経済成長が終焉を迎えた1970年代、各地で「地域再生」をテーマに研究が始まり、それまで日本ではなじみのなかったシンポジウムが、北海道池田町をはじめ全国の市町村などで開催されるようになりました。

私も、大分県湯布院町(当時)で近隣の町村の若者とシンポジウムを開催し、地域問題の提起や解決のための議論をスタートしたのですが、大分県知事(肩書は当時・以下同)の平松守彦さんがやってこられて、これが「一村一品運動」の発端になるわけです。

70年代末には「沖縄シマおこし研究交流会議」が始まった。石垣島から西表島、宮古島、沖縄本島と沖縄県内各地で開催され、池田町や湯布院町なども参加し、こうした地域レベルの草の根の動きが80年代にかけて全国的に広がっていったわけです。ちなみに「シマおこし」のシマは、島のことではなく地域共同体を指す言葉で、「地域おこし」の由来となりました。

しかし、一番のきっかけを作ったのは、神奈川県の長州一二知事が中心になって全国に呼び掛け78年(昭和53)に開催した「地方の時代シンポジウム」でした。

これに先立ち、「地域主義」という理論的な問題提起が行われていました。提唱したのは東京大学の玉野井芳郎教授です。経済理論が専門だった玉野井さんは、ヨーロッパへの長期出張について感ずるところがあったんだと思いますが、帰国後の74年に「地域主義研究会」をスタートさせた。

その後、「地域の時代」と「地域主義」が合流するような形で全国に広がっていきました。

多様化する地域研究

21世紀に入ってからは、国も巻き込んで地域づくりをどうするかという動きが活発化していき、地域研究の視点そのものも複雑化、複眼化し、非常に多様になってきました。

その一つは、国際的な研究です。地域を中心に経済を生んでいる典型は連邦国家であるドイツなので、市町村の職員がドイツの村づくりを研究する動きが出てきた。それからヨーロッパ、アジア、とくに中国の研究へと広がっていきました。

同時に、地域関係の学部を作るような動きとか、地方に拠点を持つ独自の大学というものが少しずつ増えてきた。それまで、大学の地域研究に対するアプローチは、だいぶ遅れていたように思います。研究は散発的で、多面的でもなかった。あるいは地域研究の研究所を設置することもありませんでした。

今では地域を特別な視点から見るということではなく、ごく一般的に地域問題が研究対象になるという時代になっているわけです。

今日の地域研究

今日では当たり前になった「地域研究」ですが、その意味合いは変わってきています。グローバル化の中で地域の在り方が相対化され「グローバルな地域」という視点から、かつてなかったような地域研究が改めて興ってくる時代になってきた。

また、国や地方自治体の政策でも取り上げられる。だから「政策研究」という点からも地域研究の役割が重要になってきたのではないかと思います。

前述のとおり、地域の問題を取り上げる大学の設置、大学付属の研究所が増え、研究の視点もだいぶ多様化してきました。全国に優れた研究も散見されるようになってきている。研究所等の仕組みも整備されてきています。

当研究所も研究手法が深まり、こうした全ての変化をどう見るかということが重要になってきています。これからも活発な議論が行われることを期待しています。

 

大正大学地域構想研究所創立5周年記念公開シンポジウム「ソサエティ5.0時代 東京の大学がかかわる地域再生への道」でのスピーチより(構成・編集部)

 

2020.01.15