クラスター効果

著者
大正大学地域構想研究所所長
清成忠男

クラスター効果とは

ここでいうクラスター効果とは、クラスターの形成によって生み出されるさまざまな利点をいう。まず、クラスターとは、一定の地域における企業の集積である。数多くの企業が集積する。とくに、情報面での利点が大きい。さまざまな情報が飛び交い、知的な摩擦が生じ、新しい情報が創出される。

こうしたクラスターは最初は製造業において形成された。集積の内部には分業が進展し、産業連関が次第に複雑化した。その典型は、地場産業における産地である。さらに、産業構造が高度化すると組み立て産業において下請け企業との集積が形成された。分業は地域的に拡大し、現在は国際分業も形成されている。

さらに最近ではサービス産業において集積の形成が進んでいる。都市型の集積である。

多くの企業が特定地域に集まるだけではなく、最近では、集積の形態にも変化が生じている。通信手段を活用した新しいネットワーク化が進んでいる。つまり、企業が物理的に限られた空間に数多く集まるというこれまでの集積形態を超えて、新しいネットワーク化に企業の連関が拡大しているのである。

今や、企業間の連関は特定の地域の内部における集積を超えている。むしろ、地域的限定から解放され、ネットワークは縦横無尽に展開しうる。特定の目的を有する企業が協力し合い、使命が終わればネットワークは消滅する。

この場合、前提となるのは個別企業の専門性である。独自性を有する専門企業が目的に応じて離合集散を繰り返す。したがって、特定の目的を有する企業ネットワークが絶えず生み出されるとともに使命を終えれば消滅する。まさに、新しい産業組織が形成されるのである。

こうした状況下ではネットワークをリードするコーディネーターの存在が不可欠である。

イノベーションへ

さて、クラスター効果のなかで最も注目すべきはイノベーションである。クラスターには異質な企業が多様に集積されていることが望ましい。

異質企業相互の接触により、さまざまな知的摩擦が生ずる。そして、摩擦から新しい知が創造される。新しい知を活用したイノベーションが次々に発生する。まさに、イノベーションの連鎖が形成されるのである。

こうした現象は、集積のみならずネットワークにおいても生じている。したがって、イノベーションを推進するためには、クラスターの本質を見極め、そのうえでクラスターの形成を推進する政策を用意すればよい。その際、クラスターの内外に立地する企業の自由な展開に配慮し、イノベーションの展開に導く必要がある。

なお、イノベーションが特定の産業に限定することなく、複数の産業を連関させ、幅広く政策を展開することが効果的である。それだけイノベーションの連鎖が拡大することになる。

新結合

周知のように、20世紀を代表する経済学者の一人であるヨゼフ・シュンペーターはイノベーションを新結合と呼んだ。つまり、生産手段の結びつきを変えると革新的な効果が期待されることに注目したのである。前述した異質企業の接触による画期的な効果をシュンペーターはすでに認識していたのである。

もっとも、イノベーションの主体は個人である。個人の革新的な発想や行動がイノベーションを生み出すのである。そうした革新的な活動を組織が支援し、加速することが可能である。

また、組織が個人の行動を妨げることもある。最近ではイノベーションの発生要因が多様化し、複雑化しているから組織が個人を支援する必要性が強まっている。要は、組織が個人の活動を束縛しないということである。

個人に自由が保障されないとイノベーションは成功しない。イノベーションにはリスクがともなうから、イノベーターは資金調達が困難になる。金融機関や大企業等がイノベーターに資金供給する場合にも、イノベーターの自由を抑えるとイノベーションは進みにくい。「金は出しても口は出さない。」ということがイノベーターへの資金供給の鉄則である。

なお、イノベーターへの資金供給はクラスターや新しいネットワーク形成とのかかわりで実行されることが多い。

2019.12.02